2007年05月21日

無料で音楽を勝手に楽しむ

無料で音楽を聴く、それはインターネット上ではもう当たり前の状態ですが、ダウンロードじゃあなくても、音楽配信サービスでなかろうと、今までのようにライブを見るがごとく音楽を身近に感じられる瞬間というのがあるのです。
ほっとするような、ため息がつくような感覚でしょうか、音楽の力をまざまざと感じる無料で音楽を聞いた体験です。
童話風にまとめています。

音楽を聴いた夜、それはひどく寒い冬の夜のことでした。
あたりはもうまっくらで何の音もしない、静けさという音楽が心の中に流れている夜でした。
あの音楽をダウンロードしましょうか。
街にはこんこんと雪が降っていて、マイナーな切ないバラードがよく似合うでしょう。
寒い夜の中、みすぼらしい一人の少女が歩いていました。
(雰囲気をだしたいのでYUIとでも名づけましょう)
ボウシもかぶらず、はだしでまおかつipodなどは身に付けていません。視聴するなんて聞いても何のことかわからないでしょう。
どこへ行くというわけでもありません。
行くあてがないのです。
本当は家を出るときにウォークマンを聞いていました。
でも、サイズが大きな音源しかなくて聴くこともできずに役に立ちませんでした。
実はお母さんのレコードだったので無理もありません。再生ができないようでした。せっかくのお気に入りの音楽だったのに。
posted by 音楽 at 21:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 無料音楽

無料で音楽を楽しむ2

道路をわたるときに、二台の自動車がとんでもない速さで走ってきたために少女YUIは車をよけようとして、大事な曲のレコードをなくしてしまいました。
レコードの中身は見つかりませんでした。
ジャケットは無料ダウンロードをして約7000曲は入っているipodを聴きながら歩いていた若者がすばやくひろって、「おおめずらしいじゃん!今度回そう」と言って、持ちさってしまいました。

だから少女YUIはその小さな耳に何も素敵な音楽を流すことができない状態でした。
YUIの耳は寒さのために赤くはれて、青じんでいます。

YUIの古びたエプロンの中にはたくさんのホットペッパーが入っています。

一日中売り歩いても、買ってくれる人も、無料でもらってくれる人もいませんでした。
YUIはおなかがへりました。
寒さにぶるぶるふるえながらゆっくり歩いていました。
テンポをあわせるような音楽を聴いていなかったからです。

あわれでした。
少女の肩から下げているギターのストラップに、雪のかけらがぴゅうぴゅうと降りかかっていました。
でも、YUIはそんなことに気付いていませんでした。

どの家のまども明かりがあかあかとついていて、小さくビートの効いたロックや、おしゃれなジャズの矢のしそうな音楽が聞こえてきます。
きっと無料でダウンロードしたに違いありません。
サイトへのアクセスという言葉もよく知りませんでしたが、情報だけは聞いたことがありました。
posted by 音楽 at 21:03| Comment(0) | TrackBack(1) | 無料音楽

2007年05月20日

無料で音楽を楽しむ3

そっか、今日は歌謡祭なんだ、とYUIは思いました。
一つの家がとなりの家よりも通りに出ていて、影になっている場所がありました。地べたに少女はぐったりと座りこんで、身をちぢめて丸くなりました。
アコギは持ってきていませんでした。
音楽をするには寒すぎるし、仕事中うだったからです。

小さなあんよをぎゅっと引きよせましたが、寒さをしのぐことはできません。
少女には、家に帰る勇気はありませんでした。
なぜなら、ホットペッパーが1冊も売れていないので、1曲も有料の音楽はダウンロードできないのですから。
フリーペーパってものはよくわかりません。
すると音楽家のお父さんはぜったいホッペをぶつにちがいありません。

ここも家も寒いのには変わりないのです、あそこはパソコンがあるだけ。そのパソコンだって、大きな音がして、何とか動いているだけ。小さな少女の手は今にもこごえそうでした。
そうです!
雑誌を燃やせばいいかもしれません。
マッチを箱から取り出して、カベでこすれば手があたたまるかもしれません。
YUIはライターを取り出して――「シュッ!」と、こすると、マッチがメラメラもえだしました!

あたたかくて、明るくて、小さなロウソクみたいに少女の手の中でもえるのです。本当にふしぎな火でした。まるで、大きなコンサート会場でライブをしているようでした。
いえ、本当にいたのです。
目の前には3万人の観客と熱気が充満するスポットライトがあるのです。

とてもあたたかい音楽の感動がすぐ近くにあるのです。
YUIはもっとあたたまろうと、アンコールに答えて歌いだしました。
と、そのとき!
雑誌の火は消えて、大勢のファンもスタッフも流れていた音楽もパッとなくなってしまい、手の中に残ったのは雑誌のもえかすだけでした。

少女はもう1冊火をつけてみました。
すると、火はいきおいよくもえだしました。

ブルーの光がとてもまぶしくて、バラード曲にお似合いのストリングスの旋律が流れたかと思うと、いつのまにか音楽レコーディングスタジオの中にいました。
テーブルには無料ダウンロードした曲を入れてあるUSBメモリやCDがのっていました。
ギターのピックが散らばっていて、コンプレッサーの下につぶされていました。
しかしよく見ると少女の前には、冷たくしめった音のないカベしかありませんでした。

YUIはもう一つ雑誌を燃やすと、今度はあっというまもありませんでした。YUIはミュージックメディアプレイヤーで音楽配信されているビデオクリップになっていたのです。
配信回数はとても多く、ランキングでも上位につけているようでした。

ガラスごしに見てきた、どんなラジオの生収録よりも感動的で感情のこもった名曲でした。
YUIが保存をしようと手をのばすと、マッチはふっと消えてしまいました。

たくさんあったビートルズ全集はみんな、ぐんぐん空にのぼっていって、夜空にちりばめた星たちと見分けがつかなくなってしまいました。そのときYUIは一すじの流れ星を見つけました。

すぅっと黄色い五線譜をえがいています。
「だれかがレノンの後を追うんだ…」と、少女は思いました。

なぜなら、おばあさんのヨーコが流れ星を見るといつもこう言ったからです。
人がなくなると流れ星が落ちて命がレノンのところへ行く、と言っていました。

少女はもう一度マッチをすりました。
少女のまわりを光がつつみこんでいきます。

前を見ると、光の中にプロデューサーが立っていました。

明るくて、本当にそこにいるみたいでした。
むかしと同じように、何度も録音したテイクを確認しているエンジニアさんもいました。
みんな音楽が大好きでおだやかにやさしく笑っていました。

「グッバイデイ!」と、少女は大声を上げました。
「ねぇ、わたしをいっしょに連れてってくれるの? でも……マッチがもえつきたら、音楽ダウンロードも終わっちゃうんでしょ?」

YUIはマッチの束を全部だして、残らずマッチに火をつけました。
そうしないとせっかくダウンロードした音楽が消えてしまうからです。

マッチの光は真昼の太陽よりも明るくなりました。
赤々ともえました。

なんだこりゃああ
posted by 音楽 at 21:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 無料音楽